厚生労働省によると、安全パトロール(安全衛生パトロール)は職場内を巡視し、潜在する危険要因を見つけ出すことで災害の防止を図る取り組みです。
前提として、建設業は全産業の死亡者数のうち約3割を占めます。さらに、建設現場での労災の1位は墜落・転落となっており、重大な労働労災の発生リスクが高い業界であることがわかります。こうした現場において、安全パトロールを定期的・継続的に実施することは、事故の未然防止や抑制のために重要です。
大規模な工事では、複数の企業の作業員などが混在している場合もあるため、事故が起きやすくなる傾向もあります。そうした、労働事故を防ぐため、大きな現場では特に徹底した安全パトロールを行うことが求められます。
また、厚生労働省は労働災害を減少させるための取り組みである「第13次労働災害防止計画」では、重大な死亡事故に対する罰則や企業への影響が詳しく説明されています。
例えば、死亡事故が発生し安全管理義務違反が認められた場合、労働安全衛生法第111条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
他にも重大な死亡事故を起こした場合、建設業法第28条により建設業許可の取り消しや営業停止が命じられたり、公共工事では、自治体が定める入札指名停止基準に基づき、死亡事故を起こした企業は6か月から2年程度の入札停止措置が取られたりすることもあります。
安全パトロールを行う前に、目的を明確にしておくことが大切です。代表的な安全パトロールの目的は以下です。
ここからはそれぞれの詳細について解説します。
安全パトロールの巡視には、現場設備や機器、環境の危険性を把握するという目的があります。
少しでも危険があることが分かった場合には、その場で是正措置を取るか、状況に応じて作業の中止が必要です。安全パトロールを行うことで些細な違和感でも見過ごさず、早期に対策を講じることができます。
安全衛生会議や朝礼で共有された指示内容が、現場で適切に実施されているかを確認することも、安全パトロールの目的です。
工事の進捗に応じて作業内容は変化するため、その都度ルールや基準が遵守されているかをチェックしましょう。適切な管理を行うことで、作業員および現場の安全性を維持できます。
安全パトロールを実施し、作業員の安全意識向上を図るのも安全パトロールの目的です。
作業の慣れによる気の緩みを防ぎ、現場での事故発生リスクを軽減できます。また、ルールを守っている作業員を評価し、良い取り組みを積極的に推奨することも重要です。
安全パトロールには、以下のような種類があります。
また、以下は安全パトロールを職務として義務付けられている担当者の例です。
職種 |
巡視・確認頻度 |
安全管理者 |
月1回程度 ※回数規定なし |
衛生管理者 |
法令による週1回以上の巡視 |
産業医 |
月1回以上 ※同意があれば2カ月に1回 |
管理職 |
月1回程度 ※規定なし |
経営者・役員 |
年1~2回程度 ※規定なし |
安全パトロールでは、以下の点を重点的にチェックします。
また、厚生労働省が出している簡易版の現場安全パトロールチェックリストがあるため、これらを参照するのもおすすめです。
安全パトロールを実施する際には、注意すべきことがあります。代表的なポイントを紹介しますので、意識するよう心がけましょう。
管理者と作業員の信頼関係を築くことは、安全パトロールの効果を高める上で重要です。
現場の業務災害を回避するためには作業員の危険予知能力が求められますが、その能力を向上させるためには、頭ごなしの指摘ではなく、原因に焦点を当てた対話が求められます。こうした信頼関係の構築が、安全対策の実効性を高めることに繋がります。
ルールが形骸化すると、現場の事故発生リスクが高まります。
そのため、安全パトロールでは、法律上必要な掲示物に漏れがないか、期限切れのものがないかなどを常に確認することが求められます。合わせて、ルールに対する作業員の意識レベルを高い状態に維持することが重要です。
作業員が整理整頓を習慣化することで、安全意識の向上が見込まれます。
整理整頓が不十分な現場では、転倒や資材崩れなどの危険が発生しやすくなります。作業の効率向上にもつながるため、安全パトロールの際には整理整頓の徹底がなされているかを確認しましょう。
建設業における安全パトロールには、さまざまな課題が存在しています。
特に、パトロールを通じて発見した危険因子の撮影から共有までに時間がかかることが大きな問題となっています。迅速な対応が求められる現場では、よりスムーズな情報共有の仕組みが必要です。
また、是正結果報告書の作成には多くの手間がかかります。現場ごとに異なるリスクを的確に報告するためには詳細な記録が必要ですが、その分作業負担も大きくなります。さらに、蓄積された多数の結果報告書を適切に管理し、必要な情報を迅速に検索・活用できる体制を整えることも重要です。
建設業における安全パトロールには、情報共有の遅れや報告書作成の負担など、さまざまな課題が存在しています。これらを解決し、効率的に安全パトロールを行うためには、情報共有システムの導入や遠隔臨場の活用が有効です。
情報共有システムを利用することで、パトロール時に撮影した危険因子の写真や情報を迅速に共有できます。また、現場との余計なやり取りを減少させることができ、報告書作成にかかる時間の短縮も見込めます。
遠隔臨場を導入すれば、離れた場所からでも監視・点検が可能で現場の安全性を高められます。他にも画像や動画を活用すれば、報告書作成などの作業効率化にもつながります。
遠隔臨場について詳しくは「遠隔臨場とはの記事」ご覧ください。
定期的な安全パトロールは重要ですが、一方で効率的に現場の状況を確認することも大切です。
「SynQ Remote(シンクリモート)」は、スマートフォンやタブレットを活用し、現場調査や検査を遠隔で実施できるサービスです。専用アプリをインストールせずにQRコードで利用できるため導入も簡単です。遠隔臨場を活用することで、作業の効率化や働き方の改善を実現し、安全パトロールの負担を軽減できます。
効率的な安全パトロールを実現したい場合は、ぜひ導入をご検討ください。