現場検査とは、新築住宅の建設過程で検査員が工事現場を訪れ、設計図書通りに施工されているかを確認するプロセスのことを指します。
瑕疵担保責任保険の現場検査は、住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の施工状態を専門検査員が確認し、保険加入の可否を判断するものです。検査は建物の階数に応じて2〜3回実施され、基礎配筋工事完了時や躯体工事完了時などの重要なタイミングで行われます。
現場調査については「【完全ガイド】建設業の現場調査とは?目的・ステップ・必要なものを解説」をご覧ください。
ここからは、具体的にどのような箇所をチェックするのか、詳しく説明していきます。
現場検査でチェックされるのは、住宅の瑕疵担保責任の範囲として法律で定められている「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の2点です。これらは、建物の安全性と居住快適性に直結するため、専門家の目で厳密に品質が確認されます。
構造耐久力上受賞な部分は、自重や積雪、風圧などに耐える基礎・壁・柱・床・屋根などの構造部分を指します。これらを施工する際には、コンクリートを流し込む前に、鉄筋が設計図どおりに正しく配置されているかを確認します。
基礎に欠陥があると、建物の耐震性が著しく低下し、居住者の安全に関わる重大なリスクを招くおそれがあります。
屋根や外壁、窓・ドアなどの開口部は、外部からの雨水が建物内部へ浸入するのを防ぐ重要な部分です。現場検査では、防水シートの施工状況や外壁シーリングの処理状態などを重点的に確認します。
これらの防水部分に施工不良があると、雨漏りの原因となり、構造材の腐食やカビの発生による健康被害を招く可能性があります。
現場検査の回数とタイミングは、建物の階数(3階以下と4階以上)によって定められています。
3階建て以下の建物では、原則として2回の現場検査が設けられています。1回目は基礎配筋工事の完了時点で実施し、建物の土台となる鉄筋が設計図どおりに正しく組まれているかを確認します。
2回目は、躯体工事の完了時、もしくは防水下地材を張る直前に行います。木造住宅では、屋根工事の終了後から内装下地を張る前の段階にあたるため、柱や梁などの構造躯体と防水処理の仕上がりをあわせて検査するのが基本です。
階数が4以上の共同住宅などでは、建築基準法にもとづく「中間検査」が義務づけられています。検査回数やタイミングは、建物の構造や規模、また各自治体の定めによって異なりますが、一般的には 3回以上の検査が行われます。
中間検査については「中間検査とは?対象となる建物や検査項目・必要な書類を解説」をご覧ください。
通常、1回目は基礎配筋工事の完了時点、2回目は最下階から数えて2階床の躯体工事が完了した時点で行います。さらに、階数が10以上の建物については、10階、17階、24階といったように、7階層ごとに床の躯体工事が完了したタイミングで検査を実施するのが一般的です。
なお、すべての工事が完了した後には、建物全体が法令に適合しているかを確認する「完了検査」が別途行われます。
完了検査については「建築の完了検査とは?必要書類や注意点・法改正による影響を解説」をご覧ください。
建築に関する法律が改正されると、住宅瑕疵担保責任保険で求められる技術基準にも直接影響がおよびます。この保険を提供する各法人では、設計・施工に関する独自の基準を設けており、現場検査ではその内容に沿って建物の状態をチェックします。
実際、2025年4月の法改正では、設計・施工の効率化、そして建物の長寿命化を目的に、木造・RC造・SRC造それぞれの技術基準が見直されました。
ここからは、法改正にともなう具体的な影響について、木造・RC造・SRC造にわけてご説明します。
一般的な木造住宅では、地盤・基礎・防水を中心に技術基準の見直しが行われました。改正前と後の技術基準にどのような違いがあるのか、表にまとめたのでご覧ください。
項目 | 改正前 | 改正後 |
地盤調査 | スウェーデン式サウンディング試験 | スクリューウエイト貫入試験に変更 |
基礎 | ベタ基礎の具体的な配筋基準を明記 | ベタ基礎配筋表を基準から削除 |
勾配屋根の防水 | 太陽光パネル設置に関する規定なし | 太陽光パネル等設置架台の防水処理基準を新設 |
バルコニー等・陸屋根の防水 | 太陽光パネル設置に関する規定なし | 太陽光パネル等設置架台の防水処理基準を新設 |
乾式の外壁仕上げ | 通気胴縁の幅に関する規定が緩やか | 通気胴縁の幅を原則として45mm以上に変更 |
たとえば、地盤調査では、JIS規格の改正にともない試験名称が「スウェーデン式サウンディング試験」から「スクリューウエイト貫入試験」へと変更されました。これにより、設計者や施工者は、地盤の特性をより正確に把握したうえで、それに適した基礎設計を行う必要があります。
いずれにしても、設計・施工の初期段階から、高い精度と安全性が求められるようになったのは、大きな変化といえるでしょう。特に、太陽光パネルを設置する際の防水処理や、地盤条件に応じた基礎設計の重要性は、これまで以上に高まっています。
RC造やSRC造では、設計・施工に関する基準がこれまで以上に、実態に即した内容へと見直されました。
以下に、改正前後の主な変更点をご覧ください。
項目 | 改正前 | 改正後 |
地盤調査 | 原則は四隅付近を含む4点以上。敷地が概ね均質と判断できる場合は、必要な位置・数(1点以上)に緩和可 | ※原則は四隅付近を含む4点以上。地盤状況を適切に把握できる場合は、必要な位置・数(1点以上)を認める旨を明確化 |
基礎 | 構造計算により安全性を確かめることが原則 | 地盤調査結果に基づき有害な沈下等を防ぐ設計。太陽光パネル等設置架台の防水処理基準を新設 |
塔屋等のシーリング処理 | 防水下地面の勾配は1/100以上推奨 | 防水下地面の勾配は1/50以上に統一 |
塔屋等の防水層立上げ | 屋根面と壁面の取合い部は、壁面に沿って250mm以上立ち上げる | 上記の立上げ高さ(250mm以上)に関する規定を削除 |
屋根防水 | 太陽光パネル設置に関する規定なし | 太陽光パネル等設置架台の防水処理基準を新設 |
※最終判断は保険法人の検査要領・設計者の判断に従います
調地盤調査を例に挙げると、これまでの画一的な点数基準から、敷地の状況を適切に把握できる位置と数で調査を行う、より実態に即した基準へと変更されました。
基礎の設計においても、従来の「構造計算を前提とした形式的な表現」から、「地盤調査の結果にもとづいて有害な沈下を防ぐ」という性能重視の考え方へと転換しています。
住宅瑕疵担保責任保険を申し込む際や、現場検査を受ける際には、建物の構造や工事内容を証明する複数の書類が求められます。
いずれも保険機関が設計の内容や施工の品質を正確に把握し、保険引き受けの可否を判断するための基礎資料となります。
書類名 | 備考 | チェック |
付近見取図(案内図) | □ | |
平面図 | □ | |
立面図 | □ | |
工程表 | 工事の進捗に合わせて検査のタイミングを調整するために保険法人から提示を求められることがある | □ |
工事請負契約書(写し) | 保険法人が工事範囲や請負金額を正確に把握するために提出 | □ |
見積書(写し) | 契約書と合わせて提出 | □ |
契約内容確認シート | 保険法人が指定する書式での提出 | □ |
リフォーム工事の図面・仕様書 | リフォーム瑕疵保険の申込時に修繕箇所の内容を示す資料 | □ |
上記、提出を求められる主な書類を一覧でまとめました。申請前に漏れがないように用意してください。
瑕疵担保責任保険の申請は、「着工前の申し込み」→「建設中の現場検査」→「保険証券の発行・引き渡し」という流れが一般的です。各段階で必要な書類の提出や審査が必須で、省略できません。
以下に沿って、各プロセスの特徴や必要書類を見ていきます。
住宅を建設する事業者は、工事開始前に保険法人に対して瑕疵担保責任保険への加入申し込み手続きを行う必要があります。
申し込み時には、保険契約申込書に加え、建築確認済証や設計図書など一式の書類を提出します。なお、保険法人や建物の仕様によっては、基礎の仕様や防水処理の内容を示す資料などが別途必要になるケースがあります。
その後、提出された書類にもとづいて保険法人が設計内容を審査し、自社の設計施工基準に適合していると認められた場合に、保険契約が正式に成立します。
保険契約が成立し、工事が始まると、建設の途中で保険法人による現場検査が実施されます。なお、検査の回数は建物の階数によって異なります。
【3階以下:現場検査2回】
【4階以上:現場検査3回以上】
建設中のすべての現場検査に合格し、住宅の完成と引き渡し日が確定した段階で、事業者は保険法人に対して保険証券の発行を申請します。
発行される保険証券や保険約款は、万が一、住宅に瑕疵が見つかって保険金の請求が必要になった際に、補償対象であることを証明する重要な書類です。
また、住宅の引き渡し後に発行される保険証券は事業者が保管し、住宅取得者には保険加入を証明する「保険付保証明書」が交付されます。この証明書は万が一の際に重要となるため、住宅取得者が自ら責任を持って保管する必要があります。
瑕疵担保責任保険の検査では、法律で定められた「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」を重点的に確認します。先述したように、建物の構造形式によって具体的な検査対象箇所は異なります。
木造住宅における検査では、建物の外部と内部の両方に対して、構造的な強度と防水性能が重点的に確認されます。
主に地業・地盤・基礎・外壁・屋根・バルコニーなどの部位が検査の対象です。たとえば、地面と建物を支える基礎部分については、地盤の状態や地業の適切さに加え、鉄筋が設計図どおりに配置されているかどうかを確認します。
外壁や屋根においては、防水シートの施工状況やシーリング処理の仕上がりなど、防水性能に関連する要素が厳密にチェックされます。バルコニーについても、防水処理の精度が問われる部分であり、適切な施工品質の確保が求められます。
小屋組み・耐力壁・柱・横架材・床・土台・床組といった、構造の骨格を形成する部分が検査の対象となります。いずれも建物全体の強度や耐震性に直結するため、施工精度がとりわけ重視される部位です。
鉄筋コンクリート造の共同住宅では、住民全体に関わる共用部分と、各住戸の専有部分に分けて検査が実施されます。
杭・地盤・基礎・外壁・陸屋根・ルーフバルコニーなどが主な検査対象です。コンクリートについては、設計図どおりの鉄筋が配置されているか(配筋状態)などがチェックされます。
上下階を支える柱・梁・床スラブ、および構造耐力上主要な壁が設計図どおりに施工されているかを確認します。その際、部材の接合部の処理や寸法の精度にも注意が必要です。
万が一、検査で基準に適合しない点が見つかった際、その後の対応がプロジェクト全体の進行に重大な影響を及ぼす可能性があります。ここでは、瑕疵担保責任保険の検査で知っておくべき注意点をご紹介します。
現場検査において、保険法人が定める基準を満たさない「不適合」と判断された際は、その状態のまま保険証券の発行申請手続きに進むことはできません。
保険に加入するためにはまず、検査で指摘された箇所を完全に補修する必要があります。補修が完了した後、再度検査を受け、基準をクリアしている「適合」の判定を得なければなりません。
また、保険の申込から証券発行までには一定の期間を要するため、再検査になると、引き渡しが遅れるおそれがあります。
このような事態を避けるためには、工事の計画段階から引き渡し日を基点としてスケジュールを逆算し、再検査も考慮に入れた、余裕のある工程管理を意識してください。
ソーラーパネルの設置など、標準仕様に含まれないオプション工事を行う場合には、瑕疵担保責任保険の現場検査においても、通常以上に慎重な確認が求められます。
特筆すべきは、屋根への設置により「雨水の浸入を防止する部分」に影響を与える可能性がある点です。支持架台の取り付け位置や防水処理の方法次第で、雨漏りや構造劣化につながるリスクがあるため、施工段階から専門的な観点でのチェックが欠かせません。
以下、ソーラーパネル設置に関連して注意すべきポイントをまとめました。各項目は専門的かつ技術的な判断が求められるため、検査は設計・施工基準に精通した検査員によって実施するのが一般的です。
ソーラーパネルの設置前には、屋根や下地の状態を事前に調査し、劣化・損傷が見られる場合には補修計画を立てたうえで工事を進めます。既存の屋根に問題がある状態で設置を強行すると、雨漏りのリスクが高まる可能性があるため避けるべきです。
パネルを固定する際に生じるビス穴や配線用の貫通部は、雨水の浸入経路となりやすいため、確実な防水処理が必要です。
パネルの設置によって屋根の排水が妨げられないよう、雨水が滞留せずスムーズに流れる設計・施工になっているかを確認します。
使用する屋根材の種類・形状に応じて、施工方法や架台の固定手段を適切に選定し、建物の安全性やソーラーパネルの荷重に耐えられる設計かどうかを検証します。
ソーラーパネルを設置したことで雨水の流れが変わり、軒樋や排水口までの排水経路が適切に機能しているかどうかも、重要な点です。排水不良は雨漏りや結露の原因となる可能性がなるため、事前の排水計画と施工の精度が重要です。
瑕疵担保責任保険の現場検査で「不適合」と判断された場合、補修と再検査が必要になり、工程に大きな影響を与えます。こうしたトラブルを避けるには、検査前の入念な準備と、現場との情報共有が欠かせません。
なかでも現場監督にとって悩ましいのが、事務所と現場のあいだで生じる連絡のズレです。図面や是正指示の伝達ミス、現場写真の取り違えなど、小さなミスが検査不合格や工期の延長につながる可能性があります。
そこで活用したいのが、現場専用に設計されたビデオ通話ツール「SynQ Remote(シンクリモート)」です。本ツールを導入することで、現地に足を運ばなくても、事務所から検査の様子を映像で確認し、検査員とその場でやり取りができるようになります。
たとえば、屋根の防水処理や太陽光パネルのビス留めなど、細部の状態をリアルタイムで確認しながら、その場で是正方針を共有できるのは大きいです。専門スタッフと相談しながら判断できるため、曖昧な対応や連絡の行き違いを防げます。
さらに、検査の様子を映像として保存することで、後日の確認や社内報告にも役立てることができます。再検査の際も、事前の映像をもとに確実な対応がとれ、二度手間になりません。
「SynQ Remote」を取り入れることで、現場との連携がスムーズになり、検査準備や記録管理の手間も軽減されます。「今後の検査体制を見直したい」とお考えの現場監督の方は、ぜひ一度導入をご検討ください。