【完全ガイド】建設業の現場調査とは?目的・ステップ・必要なものを解説

現場調査において、「担当者によってやり方や精度に差が出る」「調査の質が安定せず設計に影響する」といった悩みを感じていませんか。
現場調査は、工事後の状況を正しくつかみ、次の工程や安全管理に生かすために欠かせない作業です。ただ確認するだけでなく、どう記録を残し、どう再現性を高めるかが重要となります。
そこで今回は、現場調査の基礎知識や進め方、必要な道具、調査時のチェックポイント、効率化のポイントなどを徹底解説します。現場を預かる立場の方は、ぜひ最後までご覧ください。
建設業での現場調査とは?工程・安全管理のために現場を把握すること
一般的に現場調査とは、施工完了後の現場に対して行う確認作業を指します。現場の状況を正確に把握し、その情報を工程管理や安全対策へ、適切に反映させることが主な目的です。
調査対象は、周辺環境や電線・電柱・埋設物の有無など多岐にわたります。カメラなどを用いて現場を記録し、以降の設計・施工における判断材料として活用するのが一般的です。なお、現場調査は工事に関連する場面に限らず、事故やトラブル発生時の状況確認にも用いられます。
また、建設現場でも「現地調査」のことを現場調査と使われることがあります。
施工前の調査(現地調査)に関しては「別記事(現地調査)タイトル」をご覧ください。
現場調査の重要性
現場調査は、建設プロジェクトを成功に導くために欠かせないプロセスです。特に既存建物を扱う場合、図面と現地の状況に食い違いが生じるケースも多く、入念な事前調査が欠かせません。図面や資料だけでは把握しきれない現場の実態を正しく捉えることが、設計や施工の適正化につながります。
具体例をいくつか挙げましょう。たとえば、リフォーム工事では、現場においてはじめて、構造の違いや想定外の劣化が見つかることがあります。調査段階でこれらの情報を把握しておけば、施工プランや見積もりの精度を高めるとともに、資材の手配や工程管理の最適化を図れるわけです。
また、現場調査はリスクマネジメントの観点でも重要です。地形や地盤、周辺環境の変化といった要因を含めて広く情報を収集・記録することで、計画初期の判断材料が増え、施工中のトラブル回避や品質の安定が期待できます。
現地調査との違い
現地調査と現場調査は、実施タイミングと目的に違いがあります。現地調査は通常、建物などの「施工前」に行われるもので、主に工事の可否判断や必要情報の収集を目的とします。たとえば、地盤の強度確認や液状化のリスク評価、近隣住民への聞き取り調査(サウンディング)などがこれにあたります。
一方、現場調査は「施工後」に実施される工程であり、完成後の状況確認と記録が中心です。これには工事後の変化や異常の有無、工事前後の比較を目的とした記録撮影などが含まれます。
また、手法にも違いがあります。現地調査の場合、地質調査や住民インタビューなど、専門的な技術や手法が用いられることがある一方で、現場調査では主に目視確認や記録撮影を通じて現況を把握します。
現場調査の進め方と具体的なステップ【完全ガイド】
ここからは、現場調査を成功に導くための具体的なステップをご紹介します。適切な手順に沿って調査を行い、工事全体の品質向上と効率化を両立しましょう。
目的の明確化とチーム体制の構築
現場調査の第一歩は、調査の目的を明確にすることです。進捗状況の確認、安全確保、品質チェックなど、調査のゴールを明文化しておくことで、その後の作業効率が大幅に高まります。
あわせて、チーム内の役割と責任を明確にし、調査、データ収集、報告といった各作業を分担しましょう。全員が調査の方針と自らの役割を把握することで、調査精度と再現性が向上します。
事前準備と持ち物の確認
調査に必要な書類やツールをあらかじめ準備しておきます。調査計画書や地図、許可証、チェックリストなどに加え、計測機器や安全装備、必要資材の在庫状況も確認し、不足があれば事前に手配しましょう。
安全対策と現場ルールの周知
作業開始前には、十分な安全対策を講じましょう。安全装備の着用、危険区域の明示、緊急時の対応手順の確認などに加えて、現場ルールや行動ガイドラインを共有し、関係者全員が安全意識を持って作業に臨めるよう周知します。
調査実施とデータ収集
現地の観察やヒアリング、サンプリングを実施し、土地・設備の状況を正確に記録します。これについては、写真や動画による補足記録も有効です。敷地内の配管や電気設備の位置、寸法などの把握も含め、調査結果を「見える化」しましょう。なお、記録写真や寸法データは、現場資料として整理しておくと、後工程での共有に役立ちます。
データの整理・分析と評価
収集した情報を分類・整理し、分析可能な状態に整えます。重要項目を抽出して評価を行い、問題点や改善点を洗い出しましょう。この作業は、意思決定や今後の改善提案につなげるための基礎となります。
報告・共有と改善対応の実施
報告書は「目次 → 概要 → 詳細 → 結論」という流れで構成し、関係者にわかりやすく伝えましょう。報告内容は社内で共有し、意見交換や再発防止策の立案に役立てます。場合によっては、是正措置や調査手順の見直しを実施し、次回以降の現場調査プランに反映させてください。
現場調査に必要なツール・機器とは?
現場の状況を正確に把握し、信頼性の高いデータを収集するためには、用途に応じたツール・機器を準備しておく必要があります。
基本的な調査ツール・機器
以下は、現場調査に必要な基本的な調査用具の一例です。
□ メジャーテープ □ レーザー距離計 □ GPSデバイス □ ノート・筆記用具 □ カメラ・スマートフォン □ 調査計画書 □ 地図 □ チェックリスト □ 記録用テンプレート □ データ管理ツール |
寸法測定にはメジャーテープやレーザー距離計、位置情報の取得にはGPSが欠かせません。さらに、ノートや筆記用具に加え、写真・動画の記録が可能な機器も用意しましょう。これらは報告書の作成において不可欠です。
また、調査計画書や地図、チェックリストといった資料を事前に準備しておくことで、作業の抜け漏れを防ぎ、現場対応をスムーズに進められます。情報を正確に整理・共有するため、調査項目ごとにデータを管理できるツールも併用したいところです。
環境・精密調査用の機器
環境条件の把握などにおいて、以下のツール・機器が必要となります。
□ 温湿度計 □ 風速計 □ 土壌サンプリング器具 □ 生物標本採取用具 □ ドローン □ 高解像度カメラ □ 3Dスキャナー |
地質や生態系の詳細情報を得る場合は、土壌サンプリング器具や生物標本の採取用具を用いります。これらは環境影響評価や、特殊な条件下での施工判断に活用されるものです。
上空からの撮影や、立ち入りが難しい場所の確認にはドローンが有効です。高所や危険区域の状況も、安全かつ効率的に把握できます。さらに、高解像度カメラや3Dスキャナーがあれば、対象物の状態を細部まで記録できるため、構造の把握・共有に役立ちます。
現場の安全を守るための装備
現場調査を安全に進めるには、適切な装備の着用が欠かせません。まず、ヘルメットや安全靴で頭部と足元を保護し、反射ベストを着用して視認性を確保します。
さらに、手袋やゴーグルを使って手や目を守りましょう。粉塵対策用のマスクや、突然の天候変化に備えた雨具・作業服なども準備しておくと安心です。これらの装備は、調査員の身を守るだけでなく、調査業務を円滑に進めるための基本となるものです。
現場調査で確認するポイント
ここでは、現場調査において確認しておきたいポイントを整理します。施工環境や安全性、法規制といった要素を把握し、計画の精度を高め、リスクの軽減につなげましょう。
外部要因:施工環境、安全性、アクセス条件など
①地盤の状態を確認する
施工に直接影響する地盤の状態は、必ずチェックしておきたい要素です。基礎工事の安全性に直結するため、慎重な調査が求められます。
②周辺施設・敷地条件を把握する
周辺施設との位置関係や立地条件を確認しておくことで、作業のしやすさや、安全な施工スペースの確保につながります。建物の構造・寸法や状態を調べ、正確に記録しておきましょう。
③騒音・振動レベルをチェックする
配管・電気設備の配置、土地の高低差、境界線、近隣住宅との距離など、敷地内の状況もあわせて記録します。さらに、振動や騒音の測定を行い、近隣への影響を未然に防ぎましょう。必要に応じてモニタリングを行ってください。
④アクセス条件を確認する
現場までの搬入経路や車両の動線を確認しておくと、資材の搬入や現場作業の効率化につながります。こうした情報を丁寧に集めておくことで、安全で無理のない工事計画を立てられるようになります。
将来的なリスク:法規制や地域条例など
現地の法規制や地域条例の事前確認は、将来的な建築制限や罰則を回避するうえで欠かせません。地域によっては、住まいに該当する建物への建築制限があるため、法規制の確認は重要です。特に、条例違反による改修命令やプロジェクトの一時中断といったリスクを抑えられるのは、大きなメリットです。
現場調査の成功に必要なポイント
現場調査を成功させるには、安全管理の徹底と、状況に応じた柔軟な対応が欠かせません。どちらも単独では機能せず、相互に連携することで、品質の向上と業務の効率化につながります。
安全管理が重要
現場には、転倒や高所作業、化学物質の使用など、さまざまなリスクが存在します。これらの事故を未然に防ぐには、ヘルメットや安全靴といった基本装備の徹底と、応急対応の備えが必要です。安全意識を高く保ち、調査の目的に応じた情報収集と確認作業を丁寧に行うことが、プロとしての基本姿勢といえるでしょう。
安全管理が不十分な場合、法的責任や組織としての信頼失墜を招くおそれがあります。調査の不備によって再作業が発生すると、工期だけでなく、費用・コスト面においても、影響をおよぼすでしょう。
柔軟な現場対応が必要
天候の急変や地形の違い、関係者のスケジュール変更など、現場では常に不確実な要素がつきまといます。こうした変化に柔軟に対応できるかどうかが、調査の成否を大きく左右するといえるでしょう。
実際、形式的に決められた調査計画だけでは、予期せぬトラブルへの対応が難しく、作業が停滞する可能性があります。そのため、現場の状況に応じて適宜判断を下し、運用方針を見直せる柔軟な体制が求められます。
現場調査を効率化する方法
調査プロセスの標準化、チーム間の連携強化、そして最新のデジタル技術の導入によって、現場調査の手法は大きく変わりつつあります。ここでは、現場調査を効率化させる方法をいくつかご紹介します。
- 調査のルーティン化:標準化による品質均一化
- チームの協力体制の強化:役割分担と情報共有の最適化
- デジタルツールの活用:最新技術による効率的な現場調査
調査のルーティン化
調査手順をルーティン化し、誰が担当しても一定の品質が保たれる体制を構築しましょう。具体的には、標準化されたテンプレートやチェックリストを活用することで、調査の抜け漏れを防ぎながら効率的に作業を進めます。
チームの協力体制の強化
現場調査の質を安定させるには、チーム全体の連携が欠かせません。あらかじめ役割分担を明確にし、作業の重複や漏れを防ぎます。また、週次ミーティングやリアルタイム共有ツールを導入することで、収集した情報の活用が迅速になり、調査後の分析や報告作業がスムーズになります。
デジタルツールの活用
ドローンによる空撮や3Dスキャニングなどの先端技術を用いれば、広範囲のデータを短時間で取得できます。そのうえで、施工管理アプリやクラウド型システムを活用すれば、現場からリアルタイムで情報共有・進捗管理を行えるため便利です。
また、遠隔地から現場を監督・記録する「遠隔臨場」の導入も効果があります。移動時間の削減や即時対応を実現でき、全体の調査効率が大きく向上するでしょう。
遠隔臨場について詳しく知りたい方は、「遠隔臨場とは?注目されている背景や導入メリット、注意点を紹介」をご参照ください。
「SynQ Remote(シンクリモート)」で現場調査の効率化が可能に
現場調査の効率化を実現するには、調査手順の標準化、チーム間の連携強化、そしてデジタル技術の導入が必須です。しかしながら、こうした取り組みをすべて現場の努力に委ねるのは現実的ではありません。
複数拠点の同時進行や人手不足といった課題を抱える中で、安全性と効率性を両立させるには、「遠隔から支援できる仕組み」が求められます。
そこで注目したいのが、現場特化型の遠隔支援ツール「SynQ Remote(シンクリモート)」です。
「SynQ Remote」は、アプリをインストールするだけで、現場と管理者をリアルタイムに接続できるコミュニケーションツールです。映像と音声を活用することで、離れていても現場の状況を正確に把握でき、適切な指示出しが可能になります。
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