建築・不動産・リフォーム業界における現地調査とは、図面や机上では把握できない土地や物件、周辺環境の実態を確認する工程です。
その目的は業種ごとに異なります。
現地調査の確認項目は多岐にわたります。敷地形状や高低差、日照や通風、給排水や電気のインフラ位置を現地で確認し、設計やコストの前提条件を固めます。
特に接道条件は基本的な確認事項のひとつです。敷地が建築基準法で定める道路(幅員4m以上)に2m以上接していなければ、新築や増改築に制限がかかります。早い段階で把握することで、不要な手戻りや追加費用を防げます。
こうした事前確認を丁寧に行うことで、設計の精度が高まり、安心して次の工程に進められるわけです。
現地調査の目的は、現場状況を正確に把握し、予算の精度を高め、安全で効率的な施工を実現することにあります。
以下、調査によって得られるメリットを整理しました。
特筆すべきは境界線問題です。境界線問題とは、敷地と隣地の所有範囲が不明確なまま工事を進めた結果、トラブルに発展するケースを指します。
たとえば、ブロック塀やフェンスが実は隣地所有物だったにもかかわらず撤去してしまうと、損害賠償や訴訟に発展しかねません。そのために境界標の有無や位置を確認し、寸法を正確に測定すること、さらに近隣住民への聞き取りを行うことが重要です。
「株式会社アービック建設」の事例では、接道義務を満たしていない土地に対し、現地調査で課題を特定し、建築を可能にしたケースがあります。
同社は現地および市役所での調査によって、前面道路が自治体所有であることや、反対側の市営住宅敷地がすでにセットバック(前面道路の幅を確保するために土地の境界線を後退させる)されていることを確認しました。そのうえで、市との協議、隣地所有者との交渉を重ね、道路幅員を確保することに成功します。最終的に建築許可を取得し、賃貸マンションの活用に至りました。
ただし、この事例は自治体の運用や近隣の協力関係に支えられたものであり、すべての現地調査案件で同じ対応が可能になるわけではありません。現地調査の際には必ず自治体や関係者と協議を進め、個別条件に応じた判断と対応を取ることが大切です。
参考:株式会社アービック建設「接道義務を満たさない土地の活用と相続対策」
「現地調査」と似た用語に「現場調査」「現地踏査」があります。いずれも調査活動を示す言葉ですが、実施の目的やタイミング、方法が異なります。混同すると依頼時に誤解を招くため、その違いを正しく理解しておきましょう。
現地調査と現場調査の違いは、主に実施タイミングと文脈にあります。
現地調査は「着工前の不確実性を減らすための確認工程」です。建物の構造・面積・高さ、敷地内の付帯物、配管などの設備状況、資材の搬入経路や重機の設置可否、近隣環境などを確認します。調査項目は目的によって異なり、解体工事の場合はアスベストや地中埋設物の有無も重要です。
一方、現場調査は主に工事の施工中や施工後におこなわれ、進捗状況や品質を確認する検査を指します。ただし、使われる文脈によって意味合いが異なる場合があるため、契約時には用語の定義を明確にしておきましょう。
現場調査については「【完全ガイド】建設業の現場調査とは?目的・ステップ・必要なものを解説」をご覧ください。
現地踏査は、地形や地質、土地利用の状況を徒歩で観察・記録する工程を指します。実際に対象エリアを歩き、地形の起伏や地質の露頭、植生の分布、表層土壌の状態を確認し、崩落や浸食の痕跡も記録します。
主な目的は、山地や河川といった自然環境下での地質リスクを把握することですが、周辺の土地利用状況や植生、表層土壌の状態なども合わせて確認します
一方で、建築・不動産の現地調査は、施工条件やリスク管理のための実測が中心です。調査目的やスコープ、方法論が大きく異なるため、プロジェクトの要件定義や契約時には、用語の使い分けに注意しましょう。
現地調査では、多角的な視点での確認が求められます。以下のチェックリストをもとに、重要な項目をチェックしていきましょう。いずれも確認不足があると、工事の中断や余分な費用発生につながるため、慎重に対応してください。
【現地調査チェックリスト】
境界石(隣の敷地との境界を示すもの)の有無を確認し、地積測量図との寸法差をチェックします。境界石が見当たらない場合は筆界確認や境界確定測量が必要です。これを怠ると越境や面積差異による契約不適合、塀・擁壁の所有権紛争、工事範囲の誤設定に発展し、工事中断や設計変更費を招くリスクがあります。
高低差・傾き・形状・地質を目視で確認します。擁壁の傾きやクラック、地盤沈下や液状化の兆候がある場合は地盤改良工事が必要です。見落とせば構造安全性の低下や補修費の膨張、工期遅延につながる可能性があります。
前面道路の状況は、建築計画の可否や設計内容に直結する確認事項です。幅員や接道の長さを実測し、建築基準法に定められた接道要件を満たしているかを確認します。条件を満たさない場合は建築計画に制約がかかるため、早い段階で把握しておきましょう。
さらに、舗装状況や歩道の有無を調べることで、車両や重機の搬入可否を判断できます。同時にセットバックの要否や電柱・消火栓などの障害物も確認し、動線計画や日照・通風への影響を検討します。
埋設管・古基礎・廃材などは利用計画の支障となり、掘削時に発覚すると撤去費用や工期遅延を招きます。地表の痕跡確認や関係者ヒアリングに加え、必要に応じて試掘・非破壊検査を実施します。
電気・ガス・水道・排水の引き込み状況を調べます。特に水道は延伸や口径変更、道路占用・掘削申請が必要になる場合があり、引込距離や更新履歴によって費用が大きく変わります。確認が足りなかった場合、引込工事の設計変更や設備計画の再検討が必要となり、近隣ライフラインの損傷リスクも高まるため注意してください。
重機や大型トラックを搬入できるかを確認します。進入路の幅員、交差点の形状、最小回転半径を評価し、路面状況や時間帯交通量、搬出入ヤードの有無も見極めます。
進入が難しい場合は、使用する重機を小型のものに変更したり、一部手作業で解体したりするなど工法を変更するのが一般的です。その結果として工費や工期が増加する可能性があります。
建物に残された家具・機器・廃材などを調べ、撤去対象と責任範囲を明確にします。処分費用は本体工事費と別計上となり、数量・分別作業・搬出経路・有害物の有無で大きく変動します。
現地調査を滞りなく進めるには、事前準備・適切な道具・デジタル活用といった3つのポイントを意識する必要があります。ここでは、チェックリストの活用や装備の整備、遠隔臨場の導入といった取り組みを通じて、現地調査を効率的に進めるポイントをご紹介します。
ここでは、以下の現地調査を効率的に進めるためのポイントを解説します。
検査内容は、現場で思い出しながら記録するのではなく、あらかじめ目的に沿って体系化し、チェックリストに落とし込むのが基本です。
全体像を事前に把握しておけば、プロジェクトの目的や目標に合わせて必要データを明確にでき、工程ごとの所要時間や観察・採取・撮影の手順も設計段階で整理できます。その結果、検査当日の動線が短縮され、記録フォーマットも統一されます。現場担当者間で確認観点が揃い、異常や変化を見落とすリスクも抑えられるでしょう。
実務では、既存構造の劣化や配管・電気系統の配置、周辺環境の聞き取りなど、案件ごとに項目を細分化します。さらに、ヒアリング項目を標準化し、非言語的な反応なども含めて記録することで、担当者による内容のばらつきを抑えられます。
チェックリストは紙媒体でも活用可能ですが、撮影データやメモと紐づくデジタル様式にしておけば、集計・分析・報告の精度とスピードを大幅に向上できます。
現地調査の精度を高めるには、基本装備の徹底と現場条件に応じた専門機器の選定が大切です。代表的なツールを以下にまとめました。
【基本装備】
【専門的な測定機器】
これらの装備は、調査対象や計画段階での目的設定に応じて取捨選択し、当日はチェックリストと一体で運用するのが理想です。
現地調査の生産性を高めるには、記録や共有をデジタル化することが効果的です。たとえば、写真とメタデータ(撮影日時・位置情報・担当者)を紐づけて管理すれば、後日の検索性が向上します。また、電子納品の基準に準拠したツールであれば、写真の信憑性を確保しやすく、説明責任の裏づけとしても活用できるでしょう。
さらに遠隔臨場を導入すれば、事務所にいながら現場映像を確認できます。図面を共有しつつポインタで指示したり、ツールによっては音声を文字化して記録したりすることで、情報の行き違いや認識のずれ、伝達ミスが減ります。待機や移動の時間を削減でき、一人で複数現場を効率的に管理できるのもポイントです。
遠隔臨場については「遠隔臨場とは?注目されている背景や導入メリット、注意点を紹介」を御覧ください。
「SynQ Remote」を導入すれば、スマートフォンやタブレットを通じて現場映像や調査写真をリアルタイムで共有できます。
離れた場所にいる関係者も同時に確認できるため、現場へ足を運ばなくても、その場で判断・指示が可能です。
たとえば、敷地の高低差や境界の位置、既存設備の状態などを映像で確認しながら、設計者・監督・施主がその場で認識を合わせることができます。
これにより、後日の「聞いていない」「見ていなかった」といったトラブルや追加費用の発生を防止できます。
「SynQ Remote」には、現場での会話内容を自動で文字起こし・要約するAI議事録機能を搭載。誰が何を発言したかを自動で整理し、確認内容や指示事項を後から簡単に見返すことができます。録音を聞き返したり、メモをまとめ直したりする手間はもう必要ありません。
また、会社ごとのフォーマットに対応した報告書・点検記録書を自動生成できるため、撮影した写真やAI議事録と連動して、そのまま報告書として出力可能です。
現場確認から報告までを一気通貫で完結でき、調査後の事務作業を大幅に効率化します。
「SynQ Remote」を活用することで、
現場移動や待機のコストを削減
調査内容の見える化・共有の即時化
AIによる議事録・報告書の自動作成
といった効率化を一つのツールで実現できます。
現場の負担を減らしつつ、調査の質とスピードを両立させたい方は、ぜひ「SynQ Remote」の導入をご検討ください。
次のプロジェクトから、確かな変化を実感できるはずです。
※報告書作成機能は2025年10月下旬リリース予定です。