遠隔化は使い分けの基準設定が肝。トーエネック大阪本部九州支社の安全パトロール

株式会社トーエネック

部署:九州支社 情報通信グループ
https://www.toenec.co.jp/

株式会社トーエネック

部署:九州支社 情報通信グループ
https://www.toenec.co.jp/

業種

総合設備工事業(電気・通信・空調衛生)

主な利用シーン

九州・沖縄エリアの情報通信設備工事における安全パトロール/施工管理、品質管理

利用する人

グループ長/現場担当者/協力会社

使用端末

現場:スマホ/事務所:PC・スマホ

主な利用機能

ポインタ機能

遠隔撮影

利用場所

商業施設、オフィスビル、工場、公共施設、各種通信基地局などの情報通信設備工事の現場(九州全域)

お話を伺った方

株式会社トーエネック大阪本部九州支社 情報通信グループ副課長 佐々木良典様

Before

課題

  • 九州・沖縄・離島に現場が点在し、すべてを訪問すると移動時間・人員・渡航費の負担が大きい
  • 写真やチャットでは周辺状況を連続して確認できず、現場で発生をしている不具合や環境を正確に判断が難しい。
  • 全現場への一斉導入は難しく、協力会社や現場ごとに利用への慣れや受け入れ方が異なる

 After

導入効果

  • 安全パトロール数の1/3を遠隔で実施。移動を抑えながら確認件数を確保できた
  • リアルタイム映像で復旧箇所から周辺環境まで連続して確認し、静止画では分からなかった位置関係や状態を把握できた
  • 関係性のある現場から段階的に導入。映像で顔を見ながら話す機会が増え、現場との距離が縮まり、利用も徐々に定着

移動体通信基地局をはじめ、LAN・WAN設備や防犯・防災設備など、幅広い情報通信設備工事を手がける株式会社トーエネック大阪本部九州支社 情報通信グループでは、商業施設やオフィスビル、工場、公共施設、通信基地局などを対象に、施工管理から安全・品質管理までを担っています。


同グループの担当エリアは九州各地から沖縄・離島までと広く、複数の現場が同時に動きます。現地へ足を運ぶことには大きな価値がある一方、すべての現場を同じ頻度で訪問するには、人員だけでなく移動時間や渡航費も必要です。

今回は、大阪本部九州支社 情報通信グループで施工・安全・品質管理に携わる副課長の佐々木良典氏に、具体的な運用方法と現場に生まれた変化を伺いました。

 

参考9

 

 

鹿児島、宮崎、沖縄と同じ日に点在する現場を、どう管理するか

――まず、皆様の普段の業務概要を教えてください。

 

九州・沖縄エリアで、移動体通信基地局やLAN・WAN、防犯・防災設備などの情報通信設備工事を担当しています。私自身は施工管理に加え、安全パトロールを含む安全管理、品質管理に携わっています。

現場は福岡だけではありません。鹿児島、宮崎、沖縄など広い範囲に点在しており、離島の工事もあります。週間予定を見ると、同じ日に鹿児島、沖縄、福岡でそれぞれ別の現場が動いていることも珍しくありません。

 

―――SynQ Remote導入前は、広域の現場をどのように確認していたのでしょうか。

 

すべての現場へ行こうと思えば、相応の人員と移動費、渡航費がかかります。例えば同じ日にA、B、Cという3つの現場が動いていても、従来は優先順位の最も高い現場を選び、残りは電話や写真で確認するという形にならざるを得ませんでした。

チャットで写真を共有すれば、記録として残すことはできます。ただ、写真はどうしても「点」や「面」の情報です。もう少し近づいて見せてほしい、少し引いて周辺も見たいと思っても、写真を撮り直して送り直してもらう必要があります。現場の状況を見ながら、その場で会話を広げていくことは難しかったです。

 

map2

過去の遠隔検査では時期尚早と判断。再挑戦を支えたスマートフォンの手軽さ

――以前にも、現場確認を遠隔化する取り組みをされていたそうですね。

 

数年前、別のカメラシステムを使い、竣工検査を遠隔化できないか検証したことがあります。移動費や人件費といったコストを減らせる可能性は見えていましたが、当時は映像の揺れや通信環境による画質の変化が大きく、機器のシリアル番号を読み合わせることさえ難しい場面がありました。そのときは、メリットはあるものの、実運用にはまだ早いと判断しました。

現在SynQ Remoteを使ってみると、遠隔地の現場から送られる映像でも、確認に必要な文字や設備の状態を十分に見ることができます。専用機器を現場へ貸し出し、返却や保管まで管理するのではなく、現場にあるスマートフォンですぐにつながれる。その手軽さは、運用を広げるうえで大きいと感じています。

 

参考7

行くべき工程と、遠隔で見られる工程を最初に分ける

――安全パトロールは、すべて遠隔へ切り替えたのでしょうか。

 

いいえ。現場へ行くこと自体の価値は大きいので、すべてを遠隔へ置き換える考えではありません

クレーン作業や足場作業、既存電源の改修、光ケーブルの切り替えなど、当社が重要工程と位置づける作業では、社員が現地へ行って確認します。一方で、掲示物や現場内の整理状況、立入範囲、季節ごとの安全対策など、映像で確認できる項目はSynQ Remoteを使う。導入当初から、現地確認と遠隔確認の役割を手探りで分けてきました

遠隔で確認できる範囲を増やすことで、本当に現地で見るべき工程へ人と時間を振り向けられます。SynQ Remoteは、現地確認をなくすためのものではなく、限られたリソースの中で確認の優先順位をつけるための手段だと考えています。

 

図1

 

関係が築けている現場から始め、利用を段階的に広げる

――現場への導入は、どのように進めたのでしょうか。

 

最初から、すべての現場や協力会社に利用を求めたわけではありません。まずは、普段からやり取りがあり、お互いの仕事の進め方が分かっている現場から始めました。すでに関係が築けている相手であれば、映像をつなぐ目的や、こちらが確認したいことも説明しやすく、現場側にも試してもらいやすいからです。

そこで安全パトロールや状況確認に使いながら、どの工程なら映像で確認できるか、現場の負担にならない接続方法は何かを一つずつ確かめてきました。うまくいった運用を別の現場へ広げ、現在は施工計画書にQRコードを付ける形まで整えています。

ただ、QRコードを用意すれば一度に浸透するわけではありません。まず電話で連絡を受け、必要になったら映像へ切り替える現場もあります。使うこと自体を目的にするのではなく、現場の状況と関係性に合わせて段階的に広げていくことが、定着には大切だと考えています。

 

 

施工計画書のQRコードから接続。現場のタイミングを尊重した運用

――実際には、どのような流れで遠隔パトロールを実施していますか。

 

事前に実施日時を調整し、時間になったら現場責任者が施工計画書の表紙にあるQRコードを読み取って参加します。私は接続画面を開いて待ち、現場からの呼び出しを受けてパトロールを始めます。

現場にはその日の工程があり、作業責任者は作業や監視にも携わっています。こちらから一方的に呼び出すのではなく、現場が対応できるタイミングで接続してもらうことを大切にしています

画面越しに現場を見ながら、対象へもう少し近づく、反対に少し引いて周囲を映すといった案内をします。出入口の広さや掲示物の状態、月ごとに更新する表示が差し替えられているかなど、チェック項目に沿って確認します。追加対応が必要であれば、その場で現場責任者と認識を合わせ、是正や再確認につなげます。

 

参考8

 

 

――現場から相談がある場合も、QRコードから直接つながるのでしょうか。

 

緊急時は、今でもまず電話が多いですね。現場は1分1秒でも早く次の判断が欲しいので、使い慣れた電話が最初の連絡手段になります。

 

ただ、言葉だけでは分かりにくい状況になったら、現場を見せてもらうためにSynQ Remoteへ切り替える。電話をなくすのではなく、電話の次の手段として映像を使う運用が現場には合っています。

 

 

写真では分からなかった道路の状態。映像で周囲まで連続して確認

――遠隔パトロールでは、どのような場面でリアルタイム映像の価値を感じますか。

 

ある現場で、前日に舗装を復旧した箇所の写真を確認したところ、その周囲に凹凸があるように見えました。写真だけでは、新しく復旧した部分と既設舗装の境界や、凹凸がどこまで続いているのかが分かりません。工事の際に重機などの影響で傷んだ可能性も考えましたが、一枚の画像だけで判断することはできませんでした

そこでSynQ Remoteをつなぎ、復旧箇所から周囲の道路へカメラを動かしてもらいました。補修した部分だけでなく、隣接する舗装や道路全体のつながりを映像で連続して見ることで、静止画ではつかめなかった位置関係と状態を確認できました。その場で施工前の状況や作業内容も聞き、既設の舗装がもともと傷んでいたことが分かりました。

これは、対人コミュニケーションだけでなく、動く映像だからこそ判断材料をそろえられた事例です。静止画は撮影された範囲しか見られませんが、映像であれば、こちらから見たい場所や画角を伝え、周辺までたどりながら確認できます。同時に、顔を見て会話することで、責任を追及するためではなく、安全に、きちんと現場を終えるための確認だと伝えやすくなります

夏場の熱中症対策でも、リアルタイム映像の価値を感じます。気象情報だけではなく、山間部や盆地など現場ごとの環境によって、暑さ指数(WBGT)は変わります。現場で確認した数値や周囲の状況をその場で見せてもらい、当日の状態について会話しながら判断できます。写真が後から届くのではなく、今の現場を見られるので、実態に即した確認ができます。

私にとって大きいのは、文字や写真だけでは分からない「生きた声」と「生きた状況」に触れられることです。

 

参考3

 

 

安全パトロール数の1/3を遠隔で。移動を減らし、確認の接点を増やす

――遠隔パトロールは、どのくらい実施されていますか。

 

直近では、1か月に実施した安全パトロール数の1/3をリモートで行いました。


本日も、朝から3件の現場へ順番につないで確認しました。鹿児島や沖縄などへ一件ずつ移動していたら、同じ日に見ることはできません。現地で確認すべき工程には、これまでどおり足を運びますが、その前提のもと、映像で確認できる項目に遠隔確認を取り入れ、同じ日に複数の現場を確認できるようになったことが、分かりやすい変化です。

ただ、それ以上に価値を感じているのは、現場とのコミュニケーションが増えたことです。元請側の安全担当は、現場からするとどうしても身構えやすい相手です。それでも普段から顔を見て話し、確認の意図を伝えていると、少しずつ関係が変わってきます。最近では「いつでも来てください」と声をかけてもらったり、以前の指摘について現場側から尋ねてもらったりする場面も増えました。

月例の連絡会でも、SynQ Remoteで見た場面を思い出しながら、具体的な対応について感謝を伝えられます。現地へ行く回数を補いながら、現場責任者と直接話す機会は増やせる。安全ルールを一方的に伝えるのではなく、現場側が意図を理解し、自ら守ろうと思える関係づくりにもつながっていると感じます。

 

安全、品質、コミュニケーション。次は教育と記録活用へ

――今後、SynQ Remoteをどのように活用していきたいですか。

 

まずは、安全、品質、コミュニケーションという3つの軸で活用を深めたいと考えています。

安全パトロールに加えて、社内の完了点検や竣工検査でも十分に使えると見ています。工期が短い現場では、検査で指摘を出し、是正後にもう一度全員が集まるだけでも負担になります。映像で確認できる工程を組み合わせれば、品質を担保しながら、修正や是正による再入場のための時間や費用(ネガティブコスト)を減らせる可能性があります。設計者による現地調査や技術支援でも、利用を検討しているところです。

若手育成にも可能性を感じています。実際に、若手社員が現場から通信設備を映し、高校生向けのインターンシップで設備の役割を説明したことがありました。若手が自分の言葉で説明する機会になりますし、事務所にいる側も現場のやり取りを見ながら支援できます

インタビューの中で、通話内容を文字起こし・要約するAI議事録機能についても紹介していただきました。現場でベテランが伝えた確認事項や判断の観点が整理されて残れば、若手の振り返りや着工前の打ち合わせにも使えそうです。これは今後、実際の業務で試してみたいですね。

 

――運用上、今後改善したい点はありますか。

 

スマートフォンですぐにつながれることは大きな利点ですが、映像を見せている間、現場責任者の片手がふさがります。安全や作業監視を担う方が無理なく使えるよう、スマートフォンホルダーや外部カメラなども含め、両手を空けた運用を考えていく必要があります。

今後も、関係が築けている現場で積み重ねた成功体験をもとに、協力会社や対象現場を少しずつ広げたいと考えています。現場ごとに使い慣れた連絡方法や工程上の制約は異なります。まず電話を使い、必要なときに映像へ切り替える方法も含め、それぞれの現場に合う形で定着させていきたいと思います。

現地へ行くことと、遠隔で見ることは、どちらか一方を選ぶものではありません。今できることとできないことを見極めながら、行くべき現場には行き、遠隔で補える部分はSynQ Remoteで手厚く見る。その積み重ねによって、広い九州エリアでも安全と品質を守り、現場との距離をさらに縮めていきたいですね。

 

編集後記

今回の取材で特に印象に残ったのは、遠隔化を「現場へ行かないための手段」と捉えるのではなく、現地で確認すべき工程と、映像で補える工程を丁寧に見極めていたことです。現地へ行く価値を残しながら、移動だけでは届かなかった現場にも確認の機会を増やす。その考え方が、安全パトロールの実際の運用に落とし込まれていました。


また、関係が築けている現場から小さく始め、相手の業務やタイミングを尊重しながら段階的に利用を広げている点も、現場DXを定着させるうえで大切な示唆です。QRコードや機能を用意するだけではなく、まず電話で相談し、必要な場面で映像へ切り替える。そうした無理のない運用の積み重ねが、現場との距離を近づけ、安全・品質・コミュニケーションを支える基盤になっていました。

今後、完了点検や竣工検査、若手育成、記録活用へと取り組みが広がる中で、現場に合った使い方を一緒に考え、より使いやすいサービスへつなげていきたいと思います。佐々木様、このたびは貴重なお話をありがとうございました。

 

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