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アナログ規制緩和は建設業・建築業にどのような影響を与えるのか?

遠隔確認

岸田首相は目視検査や現場代理人の常駐など、社会のデジタル化を阻むアナログ的な規制に対して「3年間で一掃する」と発言しました。

(日経デジタル)首相「アナログ規制、3年で一掃」まず8割撤廃

建設業においては、この20年で約30%もの就労者が減っており、2030年には10万人が不足するといわれています。また、2024年4月からは時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定されます。「少ない人数でより多くの仕事を回していかなければいけない」「高齢のベテラン技術者が引退したあとも現場が回るようにしていかなければいけない」という問題が現実のものになってきた昨今、デジタルを活用して効率的かつ持続的な現場業務を実現していくことは急務だと言えます。

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このアナログ規制緩和には、建設業の人手不足、技術者不足、現場の効率化に繋がるであろう様々な規制緩和も盛り込まれていますが、実際の現場はどのような影響があるのでしょうか?分かりやすくまとめてみました。

どのような領域で規制が緩和される?

まず今回の規制改革では法律だけではなく、各省庁が出す規則も含めて多くの法令が緩和の対象になっています。建設業に関する法令は、建設業法や建築基準法など建設全般についてのものから、電気設備やガス設備など特定の業務・職種に関するものまで幅広く存在します。

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1つの作業に対していくつもの法律が関わることもあり、これまでの規制緩和では各省庁の縦割りが課題となって進まないケースが散見されました。今回の規制緩和では各省庁が抱える規制に横串を通し、1つ1つ個別の規制を個別に議論するのではなく、以下7つのカテゴリに分類して一気に規制を緩和していく方針です。

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今回はその中でも今回は、特に建設に影響がある「目視規制・実地監査」「常駐専任」に焦点を当てます。

目視規制・実地監査領域の規制緩和で何ができるようになる?

目視規制・実地監査には「検査・点検・監査」「調査」「巡視・見張」の3つの業務が含まれます。これらの業務は原則、人が現地に赴き、実際の目で現場の状況を確認(目視)することが求められていました。アナログ規制緩和により、スマートフォンやカメラやドローンによる確認が認められるようになります。これにより危険場所への立ち入りがなくなったり、複数人が現場に集まって行っていた作業において特定の人だけが現場に行き、残りの人は遠隔から現場の検査・点検が行えるようになります。

また、最初のフェーズではデジタル技術が使われるのは視覚(カメラやドローン)だけであり、判断そのものは人間が下しますが、後半のフェーズではAIが判断していくことも想定されています。医療業界における癌の検出など、特定の分野ではすでに人間より優れたAI(画像認識・判定)により成果が出ていますが、建設業でも近い将来同じことが起きるかもしれません。

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その他にも、以下のような業務で遠隔からの現場確認が行えるようになります。

  • 公共事業における「材料確認」「段階確認」「立会」などの業務
  • 建築基準法に基づく建築物等の中間・完了検査
  • 橋梁・トンネルなどの道路構成施設の点検
  • 太陽光発電所の月次点検を遠隔監視・遠隔測定
  • ドローンを活用した被災状況調査

常駐専任義務の規制緩和で何ができるようになる?

次は現場を監督する立場にある人の常駐・専任義務について解説します。

常駐:作業期間中、相当の理由がある場合を除き、常に工事現場に滞在していること
専任:他の工事現場に係る職務を兼務せず、当該工事現場に係る職務にのみ従事すること

公共工事においては、適正な施工を確保する観点から、施工の技術上の管理を行う「主任技術者」や「監理技術者」を現場に「専任」で配置する必要があります。また、請負契約の代理人として工事全体のコミュニケーションのハブとなり、現場全体の管理を行う「現場代理人」を「常駐」させる必要もあります。

アナログ規制緩和では、カメラを活用して遠隔から現場を管理することを認め、これら常駐・専任義務を緩和します。常に現場におらずとも管理できるようになることで、ひとりの監督者が複数の現場を管理することが可能になるのです。

常駐専任義務

一方、ただでさえ忙しい管理者がより多くの現場を同時に見ることになり、現場の安全・品質・工程管理を十分に行えるのか不安が残ります。遠隔からの現場管理により、技術者の時間を有効活用するのが狙いですが、それを実現するためには現場の人々がデジタルツールを使いこなす必要があります。現場には高齢者も多く、複雑な機器やアプリは使いこなせません。いかに現場に馴染むようなシンプルなものを選定するのかが非常に重要です。

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その他にも、以下のような役割の人の常駐・専任義務が緩和される予定です。

  • 電気主任技術者の専任義務
  • 特定建築物における建築物環境衛生管理技術者の専任義務

いつからスタートする?

2022年9月以降に明確な開始時期が公表される予定であり、明確な時期は未定です。しかし、政府は2025年までをデジタル化の「集中改革期間」と位置づけ、ここ数年で一気に変えていく姿勢なので、今年度以内に国が動き出し、急ピッチで変わっていくことが予想されます。

すでに公共工事においては、オンライン現場監督や遠隔臨場という名前で各自治体(市町村)や公共団体(警察や大学など)などが独自の要綱で遠隔現場確認を試行的に行っています。詳しい要綱については自治体・団体のHPまたは所管部門にお問合せください。

現場にはどんなメリットがある?

アナログ規制緩和に関する新しい取り組みを行うことで、現場にはどのようなメリットがあるでしょうか。

移動交通費及び移動に伴う人件費の抑制

デジタルツールを使って遠隔から現場の確認・指示を行うことで、現場までの移動にかかっていた交通費や人件費を節約することができます。片道2時間以上かかるような遠方の現場を管理したり、突発的な対応で現場に急行することも多い建設業ですが、業務時間の30%を移動に費やしている会社もあります。遠隔から0秒で現場確認ができれば圧倒的な効率化が実現できます。

ベテラン技術者の知識や経験をフルに活用!新人教育やサポートも実現

建設業における最も貴重な資源は「ベテラン技術者の時間」です。彼らが遠隔にいながら現場を管理することができれば、いくつもの現場を同時並行で管理することができます。また、新人の現場もサポートできるので、OJTだけでは難しい新人の育成・教育にもつながります。

公共事業では工事成績評定で加点対象

遠隔臨場を実施した工事の成績評定は「創意工夫」の項目において加点されるケースが多いです。デジタル化を促進したい国は、今後もこのようなデジタルを活用した取り組みに対して、加点による普及推進を行う可能性が高いと思われます。(ただし、加点の有無や対象基準は各発注者ごとに異なるので、当該工事の担当自治体・団体にお問合せください)

気を付けるべきポイントは?

前述したように現場で利用し、定着するためには「使いやすいこと」が重要であると考えています。様々な現場の遠隔ツールが出ていますが、こちらの記事でもご紹介していますので、ぜひご参考ください。

最新2022年版!遠隔臨場ツールを選ぶ3つのポイントとおすすめ9選

また、工事書類には5年、10年と保管義務がありますので、ツール選定の際にはデータの保管期間が条件を満たしているかなども確認が必要です。カメラによる撮影や会議システムによる通話の部分だけではなく、取得した写真や動画がどのように取り扱われるのかも事前にチェックしましょう。

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