採用だけでは現場が回らない時代に。神奈川県空調衛生工業会で語られた「遠隔支援で実現するナレッジ自動生成と技術継承」
2026年2月16日、一般社団法人神奈川県空調衛生工業会が開催した技術講演会に、株式会社クアンド代表・下岡純一郎が登壇しました。本レポートでは、当日の講演内容をもとに、全国の空調・サブコン業界の部会・勉強会・研修企画でも参考になるポイントを抜粋してご紹介します。
登壇者プロフィール

下岡 純一郎
1986年、北九州市八幡生まれ。建設業を営む父のもとで育ち、「現場のリアル」を原体験として持つ。熟練工が引退し、その技術が誰にも継承されないまま消えていく問題を、日本の産業構造が抱える本質的な危機と捉え、2017年に株式会社クアンドを創業。
「眠れる力を、進化の力に、変えていく」をパーパスに掲げ、SaaS・M&Aを組み合わせた独自モデルで産業構造の再編に挑む。北九州から、日本の生活インフラを次世代へつなぐナレッジ・インフラの構築を目指している。
なぜ今、空調・設備業界で技術継承と現場DXが求められるのか
一般社団法人 神奈川県空調衛生工業会の技術講演会は、会員企業の経営体質強化、技術水準の向上、環境保全活動の推進を目的に毎年開催されているものです。 (神奈川県空調衛生工業会 公式HP )
2026年2月の講演会では、第1部で横浜市建築局による基調講演「脱炭素社会の実現に向けた取組」、第2部で民間企業による製品・技術・事業紹介が行われました。
その中でクアンドが担ったのが、「遠隔支援で実現するナレッジ自動生成と技術継承」というテーマです。
いま、多くの空調・設備会社にとっても、人が減るなかで現場をどう回し、どう品質を守り、どう技術を次世代へつないでいくかが重要課題です。
今回の講演は、そうした空調・設備業界の“いま困っていること”に対して、現場目線でヒントを提示する内容でした。

「人を増やす」だけでは追いつかない時代に、施工キャパをどう高めるか
講演前半では、建設・設備業界における人手不足の現実を整理させていただきました。
大手・中堅の建設会社の約7割が「2026年度内は大型工事を新規受注できないとみている」と回答しており、背景には深刻な人手不足があります。 (引用:日本経済新聞「大型工事「26年度受注できず」建設会社の7割 成長投資阻む人手不足」)
さらに、国土強靭化、半導体工場、データセンター建設などにより需要は増え続ける一方、担い手は確実に減少しています。
ただ、現場の感覚で言えば、これは数字の話だけではありません。
- 現場を増やしたくても監督できる人が足りない
- ベテランに案件や判断が集中している
- 若手がいるのに、一人で任せられるまで時間がかかる
- 写真を送っても判断できず、結局経験者が現場に呼ばれる
- 応援や移動で何とか回しているが、限界が近い
こうした状態が続けば、採用を増やすだけでは追いつきません。
必要なのは、「人を増やすこと」だけでなく、判断、支援、教育、共有のやり方を見直し、今いる人材で現場を回せる体制に変えていくことです。
下岡は、施工キャパを高めるとは単に人員を増やすことではなく、限られた人員の中で、現場を支える仕組みそのものを変えることだと語りました。

技術継承の本質は、マニュアル化ではなく“日常会話の資産化”
若手が現場からベテランに電話し、「この納まりで問題ないですか」と確認する。
そうした日常のやり取りの中にこそ、技術継承のヒントがあります。
講演の中心となったのは、技術継承の考え方です。
現場では、ベテランが持つ知識や判断の勘所をどう残すかが長年の課題となっています。しかし、ベテランほど忙しく、あらためてマニュアルを整備する時間を確保するのは簡単ではありません。
そこで下岡が提示しているのが、技術継承を“特別な作業”として切り出すのではなく、日常業務のなかで自然に起きている会話や判断を資産化していくという考え方です。
現場で交わされる「ここを見てほしい」「この判断でよいか」「なぜこの対応をするのか」といったやり取りの中には、写真や図面だけでは伝わらない知見が多く含まれています。
そうした会話を遠隔支援の仕組みを通じて蓄積し、振り返りや再利用ができる形に変えていくことで、技術継承は“残すための追加業務”ではなく、働きながら進む日常業務へと変わっていきます。
講演後半では、下岡が創業した クアンドが開発・提供する遠隔コミュニケーションツール「SynQ Remote(シンクリモート)」を活用した導入事例も交えながら、この考え方を具体的に紹介しました。
「SynQ Remote」とは、スマートフォンやPC等で遠隔地にいる人とビデオ通話を行い、現場のあらゆる会話が映像と共に自動で記録・テキスト化され、現場のナレッジとして蓄積されるアプリケーションです。
DXを定着させる鍵は、“ばらまき型”ではなく“巻き込み型”
講演ではあわせて、なぜDXが現場に定着しないのかについても解説しました。
多くの企業が「ツールを導入したのに現場で使われない」という課題に直面しています。その背景には、経営が決定し現場が従うトップダウン型の進め方と、日本の現場に多い対話重視の進め方とのギャップがあります。
日本の建設・設備業界では、ナレッジはまず“人”に蓄積されます。だからこそ、仕組みを一方的に入れるだけでは根づきません。必要なのは、現場を管理対象として扱うのではなく、一緒に変化をつくる当事者として巻き込んでいくことです。
下岡は、DX推進の方法論として、全社へ一斉に展開する“ばらまき型”ではなく、少数の協力者から始めて小さな成功事例をつくり、そこから広げる“現場協力型”を提唱しました。
一気に変えるのではなく、小さく始めて確実に根づかせる。
その進め方は、建設・設備業界に限らず、自治体や各種業界団体、協会・部会などにおけるDX推進や技術継承にも通じる考え方です。
DXツールの紹介にとどまらず、「なぜ定着しないのか」「どこから始めるべきか」まで語られている点は、会員企業が自社に置き換えて考えやすく、部会や勉強会のテーマとしても扱いやすいポイントです。

【講演・勉強会のご相談】業界団体・自治体・企業研修にも対応しています
今回の講演で下岡がお伝えしたのは、単なる製品紹介ではなく、
・人手不足時代に施工キャパをどう高めるか
・ベテラン依存からどう脱却するか
・DXを“導入”で終わらせず、どう現場に定着させるか
・技術継承を“負担”ではなく“日常”として設計できるか
といった、現場産業に共通するテーマです。
そのため今回の内容は、空調衛生業界に限らず、建設、設備、インフラ、保守、点検、自治体関連業務など、人手不足と技術継承に向き合う多くの現場産業に通じる内容となっています。
「現場に寄り添ったDXの話をしてほしい」
「技術継承を、理想論ではなく実践ベースで考えたい」
「会員企業にとって示唆のあるテーマで講演を企画したい」
そのようなご関心をお持ちの団体・企業の皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください。
講演・勉強会のご依頼およびSynQ Remoteの導入相談は、こちらからお問い合わせください。
▽お問い合わせはこちら
https://www.synq-platform.com/contact
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