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排水勾配とは?計算方法や排水設備等工事完了届の流れを解説

排水管の施工では、「勾配が合わない」「完了検査で指摘された」「施工後に詰まりが出た」といったトラブルが頻発します。

しかし、建築基準法で定められた正しい勾配基準と、現場でのチェックポイントを押さえることで、これらの不具合は確実に減らせます。

本記事では、排水勾配の定義から計算方法、施工管理、完了届まで 現場でそのまま使える知識 を体系的に解説します。

勾配トラブルを防ぎたい施工管理者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

排水勾配とは

排水勾配とは、水の流れをよくするために排水管や路面につける傾きのことです。

排水勾配の説明図

勾配を管径に応じた基準値以上に設定すれば、建物の劣化や環境汚染を防ぐことが可能です。ここでは、排水勾配の定義や重要性を確認します。

排水勾配の定義:水を流すための傾き

排水勾配は配管や路面、屋根などに設ける傾きで、その単位には%や‰(パーミル)が用いられます。たとえば、1/100勾配は水平100cmに対して1cm下がる傾きを意味します。

勾配がゆるすぎると水の流れが悪くなり、配管内に汚物溜まりが発生します。一方、勾配が急すぎると水の流れが速くなり、管内部が摩耗したり接合部が損傷したりします。

勾配不足は排水不良や管損傷の原因になるため、正しい知識を持って施工する必要があります。

排水勾配の目的:水の流れをよくする

排水勾配を設ける目的は、水をスムーズに流して詰まりや逆流を防ぐことです。適切な勾配は、汚水の滞留や、配管や構造物の損傷を防止します。

排水勾配の重要性:環境への配慮

正しい勾配設定は、汚染物質が滞留せず、河川や土壌への負荷を減らせます。

また環境面での効果を維持するには、施工後の「排水設備等工事完了届」による検査が欠かせません。完了検査で勾配を確認しておけば、長期的に安定した排水性能を保てます。

完了検査について詳しくは「▶建築の完了検査とは?必要書類や注意点・法改正による影響を解説」をご覧ください。

正しい勾配設定は、汚染物質が滞留せず、河川や土壌への負荷を減らせられる

 

排水勾配の種類と基準

排水勾配には、管径や用途に応じた種類と基準があります。適切な勾配を選ぶため、配管の場所や管の太さを理解しておきましょう。

適用範囲と配管種別

排水管の種類は、「屋内配管」と「屋外配管」の二つに分かれます。屋内配管は、台所や浴室、洗面所、トイレなどから出る排水を流す配管です。一方の屋外配管は、宅地内で下水道の接続部まで地中に埋めた配管を指します。

下水道システムには「合流式」と「分流式」があり、どちらを採用するかは自治体によって異なります。合流式は汚水と雨水を同じ管で流す方式で、分流式は汚水管と雨水管を別々に設ける方式です。

また、配管の材質には、塩ビ管(VP管・VU管)や鋳鉄管、ポリエチレン管などがあり、材質によって必要な勾配が変わります。

種類:50mm・75mm・100mm

排水管には主に、内径50mm・75mm・100mmの3つのタイプがあります。

管径 主な用途 最小勾配
内径50mm 建物内の排水管 1/50(2%)
内径75mm 雨水の排水用 1/100(1%)
内径100mm 雨水以外の排水、特に汚水 2/100(2%)

このうち、75mm管は広い勾配範囲でバランスの取れた流速を保てるため、近年使われることが増えているタイプです。

排水勾配で使う配管

 

基準:小口径の管ほど勾配を大きくする

管径と最小勾配の関係は、「日本下水道協会」の基準で定められています。管径が小さいほど、大きな勾配が必要となります。小さな管は詰まりやすいため、勾配を大きくして流速を確保する必要があるためです。

施工時には下記基準表を確認し、管径に応じた適切な勾配を設定しましょう。

管径 最小勾配
50mm以下 1/50(2%)
75mm 1/100(1%)
100mm 2/100(2%)
125mm 1/150
150mm以上 1/200

 

排水勾配の設計の要点と計算の仕方

排水勾配の設計では、排水勾配の落差は次の式で求めます。

落差(cm)= 配管距離(cm) × 勾配

勾配を計算するには、起点・終点の高さを決めてから設計していく必要があります。

ここでは、排水勾配の設計方法を以下のように段階的に解説します。

必要な落差を計算

落差を求める基本の計算式は「Δh=L×勾配」です。

  • Δh:落差(cm)
  • L:配管の水平距離(cm)
  • 勾配:管径に応じた基準値(2/100、1/100など)

 

この式を使えば、配管の長さと勾配から必要な高低差を算出できます。以下の2つの例で、管径ごとの計算方法を確認しましょう。

計算の流れ 計算例1(汚水管100mm) 計算例2(雨水管75mm)
1:条件を確認 配管の水平距離:340cm
必要な勾配:2/100
配管の水平距離:500cm
必要な勾配:1/100
2:勾配を小数に変換 2÷100=0.02 1÷100=0.01
3:計算式に
当てはめる
340cm×0.02 500cm×0.01
計算結果
(必要な落差)
6.8cm以上 5.0cm以上

このように、管径が大きくなると勾配は緩やかでよいため、同じ距離でも必要な落差は小さくなります。

起点と終点の高さを決める

配管の起点高と終点高を決めるとき、下流側の接続先を基準に考えます。公共下水道の受け口ますの底面高さを基準にして、そこから逆算して起点高を設定します。

排水桝は、建築物の外壁から1.5m以内に設置するのが原則です。この距離を守ることで、配管の点検や清掃がしやすくなります。

終点から起点の高さを決める

実際の設計では、終点(公共下水道の受け口ます)の底面高さは決まっています。そこから逆算して起点の高さを決めます。

たとえば、終点の底面高さが地盤面から-50cmの位置にあり、必要な落差が6.8cmの場合、起点は-43.2cm(-50cm+6.8cm)以上の高さに設定します。

この計算を正確に行うことで、適切な流速を確保し、詰まりや逆流を防げます。

 

排水勾配の現場測量・施工管理

勾配のずれは詰まりや逆流の原因となるため、排水勾配の測量と施工管理が重要です。ここでは、現場測量・施工管理の流れを解説します。

 

墨出し・レベル出し

墨出しやレベル出しでは、オートレベル、レーザーレベル、勾配計を使い分けます。それぞれの機器には得意な測定範囲があるため、現場の状況に応じて選びます。

オートレベルは、高低差を精度高く測定できる機器です。基準点からの高さを読み取り、配管の起点と終点の高低差を確認します。精度は±1mm程度で、長距離の測量に適しています。

レーザーレベルは、水平線を瞬時に検出できる機器です。回転するレーザー光で基準面を作り、複数の地点で同じ高さを素早く出せます。作業効率が高く、広い現場での墨出しに向いています。

そして勾配計(スラント)で、傾斜面の角度を直接測定します。配管に当てて勾配を読み取れるため、施工中の勾配確認に便利です。

 

床下・地中配管の施工順序

床下や地中の配管施工は、以下の順序で進めます。

  1. 根切り:設計どおりの深さまで地盤を掘削する
  2. 砕石:底面に100mm厚の砕石を敷き込む
  3. 管敷設:設計勾配を保つように配管を配置
  4. 締固め:管周辺の埋戻し土をローラーやランマーで圧密
  5. 埋戻し:層状に施工しながら段階的に転圧

各工程を丁寧に行うことで、配管の沈下・勾配のずれを防ぎます。

継手・支持方法

配管を固定するため、サドルを約1〜1.5m間隔で設置します。サドルは配管の下に敷く受け台で、荷重を分散させて管を保護します。

吊り金具は約2〜3m間隔で取り付けます。天井や壁に固定した吊り金具で配管を支え、たわみや振動を防ぎます。

排水管の埋設深さは、最低でも20cm以上の土被りが必要です。土被りが不足すると、地上からの荷重で管が破損する恐れがあります。寒冷地では凍結深度を考慮して、さらに深く埋設します。

雨天・地下水・軟弱地盤への対応

雨天時や地下水が多い現場では、仮排水設備で地下水を排除します。水が溜まったまま施工すると、地盤が緩んで管が沈下するからです。

管を布設した後は、十分な転圧で埋戻しを行います。埋戻し土の含水比を適切に保ち、締固め度が95%以上になるまで転圧します。

転圧が不十分だと、地盤が沈んで管の勾配が狂う恐れがあります。特に軟弱地盤では、地盤改良や置換えを行ってから配管を設置しましょう。

品質管理:通水試験/水張り試験/カメラ調査

施工後は、通水試験、水張り試験、カメラ調査を必要に応じて実施します。これらの試験により、「勾配が正しく取れているか」「漏水がないか」を確認できます。

通水試験では、実際に水を流して排水状況を確認します。流れが滞留せず、スムーズに排水されれば勾配は適切です。流れが遅い箇所があれば、勾配不足や詰まりの可能性があります。

水張り試験では、管内に水を満たして漏水の有無を調べます。一定時間後に水位が下がっていなければ、接続部に漏れはありません。水位が下がる場合は、接続部を再確認します。

たとえば、カメラ調査では、管内の状態を映像で記録します。管内カメラを挿入し、管の損傷や継手のずれ、異物の有無を確認します。映像は記録として保存し、竣工図書に添付します。

カメラ調査では、管内の状態を映像で記録

 

排水勾配の施工・注意点

排水勾配の施工では、トラップの設置、凍結対策、排水エルボの配置といった細かな注意点があります。

トラップを設置する

トラップは封水機能により、排水管または公共下水道からガス、臭気が屋内に侵入するのを防止するために設ける器具です。排水口から流れてきた水がトラップ内にたまると、この封水が下水管からのガス・臭気の侵入を遮断します。

トラップは封水機能により、排水管または公共下水道からガス、臭気が屋内に侵入するのを防止するために設ける器具

トラップの材質は、耐食性があり吸水しない滑らかなもの(金属製やプラスチック製など)を選びます。

洗面台などの器具自体にトラップがある場合、排水管のトラップは不要です。二重トラップになると、流れが悪くなって詰まりの原因となります。

なお、トイレにはトラップを設けません。水洗便器は便器内部に洗浄水封構造を備えているからです。

 

凍結対策を行う

排水管は、最低でも20cm以上の深さに埋めます。寒冷地では地表に近すぎると凍結の恐れがあるため、凍結深度を考慮してさらに深く埋設します。

その際、凍結による管破損を防ぐため、屋外配管は保温材で覆います。保温材には、筒状のウレタンフォーム製やシート状の発泡ポリエチレン製があり、吸水性のない素材を選びましょう。

排水管は寒冷地では地表に近すぎると凍結の恐れがある

 

排水エルボの数を少なくする

排水エルボとは、排水管に設ける曲がり管のことです。エルボが多いと流速が落ち、汚れや詰まりの原因になります。

排水エルボとは、排水管に設ける曲がり管

配管ルートを計画する際は、できるだけエルボの数を減らし、直線的な経路を選びます。

やむを得ずエルボを使う場合は、小曲りよりも大曲りのものを選んでください。大曲りエルボは、流速の低下を抑える設計になっており、汚物が滞留しにくいためです。

 

排水勾配の法規・基準・自治体手続きについて

排水勾配の設計・施工は、複数の法規制と基準に従う必要があります。主な法律は下水道法と建築基準法で、これに各自治体の基準が加わります。ここでは、排水勾配を設計・施工する際に注意すべき法規制・基準を解説します。

下水道法関連(民間排水設備の接続・検査)

公共下水道の供用開始地域では、土地所有者に排水設備の設置義務があります(下水道法第10条)。

排水管の勾配については、下水道法施行令第8条第5項で「やむを得ないとき以外は1/100以上」と規定されており、これは全国一律の最低基準です。

建築関連の技術基準・指針(設備設計の一般原則)

排水配管設備には、「排出すべき雨水または汚水の量及び水質に応じ、有効な容量、傾斜及び材質を有すること」が求められます(建築基準法施行令第129条の2の4第3項)。この規定は、排水設備全般の性能基準を示したものです。

自治体「排水設備工事指針」への準拠が必須(地域差あり)

施工にあたっては、各自治体が定める「排水設備工事指針」への準拠が必要です。この指針は下水道法と建築基準法を基本としながら、地域の気象条件、地盤特性、下水道整備状況を反映した独自基準を定めています。施工前に該当自治体の基準を確認しましょう。

指定工事店制度の有無と役割(自治体指定業者による施工・申請)

指定工事店制度は、下水道法および各自治体の条例、水道法第16条の2(給水装置工事の場合)に基づき各自治体が定める制度です。専門知識と技術を持つ業者のみに工事を認めることで、粗悪な工事による被害を防ぎます。

指定工事店制度の有無と役割

 

排水設備等工事完了届の手順

排水設備工事が完了したら、自治体へ完了届を提出し、検査を受ける必要があります。

以下のフロー図では、下水道排水設備工事における確認(申請)から検査、使用開始までの事務手続きの全体像を整理しています。

下水道排水設備確認等業務処理フロー

出典:仙台市「排水設備確認申請の手引き」

完了届は、工事が法令要件を満たしているかを確認する法定手続きです。その提出から使用開始までの流れは以下となります。

手順 内容 期限・所要時間
1. 工事完了 排水設備工事が完了し、自主検査を行う -
2. 完了届提出 自治体の下水道担当へ完了届と添付書類を提出 工事完了後速やかに
3. 検査日調整 検査日程を調整 提出後1カ月以内
4. 立会い検査 検査員が現地で図面との一致性、勾配などを確認 数十分が目安
5. 合格/不合格判定 基準を満たせば合格、満たさなければ是正・再検査 検査当日
6. 使用開始手続き 合格後、公共下水道の使用開始手続きを行う 合格後速やかに

 

提出先は自治体の下水道担当(上下水道局・水道課など)で、工事完了後速やかに提出します。

 

完了届の記載項目と添付書類

完了届には以下の項目を記載し、必要書類を添付します。

区分 内容
記載項目 ・工事件名
・所在地
・施主情報
・施工業者(指定工事店)情報
・主任技術者
・配管種別(汚水・雑排水・雨水)
・管径・延長・桝数
・施工期間
・完了日
添付書類 ・竣工平面図
・縦断図(勾配・標高の明記)
・使用材料
・機器リスト
・施工写真(埋戻し前の配管、勾配計測、桝、接続部)
・検査申請書
・指定工事店登録証の写し

 

また、立ち会い検査では、設計図面との一致性、勾配の適切性、マンホール・清掃口の設置位置と構造、トラップの有無と構造、通気管の設置状況を確認します。

 

よくある申請不備と対策

よくある不備は、図面の標高基準未記載、写真不足、指定工事店要件未確認、雨水・汚水の系統誤りです。提出前に記載項目と添付書類を入念にチェックすることで、これらの不備を防げます。

 

排水設備等工事完了届の実務チェックリスト

提出前の最終確認として、以下の項目をチェックします。

確認項目 チェック内容
・勾配
・標高の通り確認
要点検口からの通水により、設計通りの勾配が保たれているか
・桝位置
・深さ
・蓋種類の確認
桝が設置され、深さと蓋の種類が基準を満たしているか
・逆勾配
・たるみの有無
水糸・レーザー・カメラで配管に逆勾配やたるみがないか
・清掃口設置
・アクセス性
清掃口が設置され、維持管理のためのアクセスが保たれているか
・図面
・写真
・帳票の整合
日付・箇所・寸法表示が一致しているか
・自治体版様式
・添付要件の再確認
最新様式を使い、欠かせない添付書類がすべて揃っているか
・指定工事店の押印
・署名・連絡先
指定工事店の情報が正確に記載されているか

 

施工写真・図面の撮影・作成のコツ

施工写真は、工事の品質と進捗を客観的に残すために撮影します。検査時の証拠資料となり、トラブル発生時も施工内容を確認できます。

まず、埋設前後では、勾配計器の表示を含めて写真撮影を行います。勾配計を配管に当てた状態で撮影すれば、設計どおりの勾配で施工した証拠を残せます。

配管の全体像だけでなく、接続部や桝の設置状況も記録しておきましょう。撮影時には黒板やホワイトボードに撮影日時と箇所を書いて一緒に撮影すると、後から整理しやすくなります。

図面表現では、基準高(BM:ベンチマーク)、縦断記載、勾配注記の統一が求められます。縦断図に管底高と地盤高を記載し、勾配は分数表記(例:1/100)で統一します。

なお、施工写真をデジタル化して日付順に並べ、クラウドシステムで共有すれば、検査時の資料提出がスムーズになります。必要な写真を素早く検索でき、工事の進捗状況も関係者全員で確認できるため便利です。

 

「SynQ Remote(シンクリモート)」で排水勾配の確認を効率化!

排水勾配の施工では、設計から完了届の提出まで、各工程で確認が必要です。管径に応じた基準を守り、勾配を正確に施工することで、詰まりや悪臭を防げます。

ただし、勾配確認や書類チェックのために現場と事務所を何度も往復する必要があります。現場責任者にとって、その負担は無視できません。

しかし、現場特化型のビデオ通話ツール「SynQ Remote(シンクリモート)」を導入することで、スマホやタブレットで現場の映像を共有し、遠隔から施工状況を確認できます。

さらに撮影した写真や図面もクラウドで共有できるため、現場への移動回数を減らし、時間とコストを削減できます。

興味のある方は、ぜひツールの詳細をご確認ください。遠隔確認で現場作業の負担を軽減し、根本から働き方を変えていきましょう。

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